ルール

ワールドラグビー「競技に関する規定」

第22条 人工芝の使用に関する基準

ラグビー競技場の人工芝に関するIRB 性能仕様書

新世代の人工芝の導入について

ラグビーの試合は伝統的に天然芝の競技場で行われてきた。これは伝統という理由だけではない。理想的な状態の天然芝の競技場は、ラグビーの試合に最適だからである。天然芝によるフィールドは、最高レベルの国際試合に適した足場の確保、衝撃吸収性、ボールの弾み、トラクション(スパイクの引っかかり)、変形度や安定性のほか、景観的な美しさを実現することができる。その反面、このように理想的な天然芝にはマイナス面もあることは否めない。天然芝の性能特性を維持するためには、徹底的な維持管理体制が必要となるのである。

天然芝は自然のメカニズムによる産物であることから、栄養摂取量の充分な管理、手入れだけでなく、芝の根に空気や水がゆきわたるような柔らかい土壌構造、水はけをよくするための給気や日光を取り入れること等が必要であり、必要条件は多岐に渡る。これらの要素の1つないしは2つ以上のものが欠けると、理想的な状態を得ることはできない。さらに、天然芝の競技場には使用頻度による影響があることも欠点として上げられる。芝面を使えば使うほど、磨耗や断裂が増えてくる。また、天然芝が許容できる使用頻度には、限度がある。ひとたび直しようのない損傷を受けると、芝面の性能が壊滅的となり、競技場自体が試合に適したものではなくなる。そのような状態でも競技場として使われ続けることがよくあるが、その場合の芝面の性能はプレーヤーにとって許容できるレベルを遥かに下回る状態であると言える。

気候条件も天然芝に大きな影響を与える。地球の気候条件の変化によって、様々な種類の天然芝が自然に作られている。天然芝の競技場でも、ラグビーの試合にとって最適な品質だと思われるものもあれば、プレーに支障を及ぼしかねない全く不適切なものまで様々な種類があり、乾燥しているか湿気が多いか、寒いか暑いか、などといった多様な条件がその理由にある。世界の様々な気候が、天然芝の育成に良い条件となることもあれば、悪い条件となることもあるのである。

気候による問題がなくても、競技場の設計やグラウンドキーパーの質など、天然芝の全体的な品質に影響を与える要因は、他にもある。

上記の理由から、長年にわたって、クレイ(土)、シェール(頁岩)、砂、人工芝など、天然芝の代用品としての提案が行われてきたが、どれ1つとしてラグビーの試合に必要な条件を満たすものはなかった。しかし、ここ4~5 年で見られるようになった新世代の人工芝は、ラグビーの世界で注目されるようになってきている。本仕様書は、合成芝メーカー各社向けの、ラグビーのニーズに則したガイドラインを提供することを目的としている。

22.2 人工芝の歴史

1960 年代: 1960 年代初頭、Monsanto(モンサント)社がナイロンファイバーの芝をカーペット状に植えたものを開発した。この製品は、後にASTROTURF(アストロターフ)と称され、人工芝ビジネスのはしりとなった。この高密度のカーペット状人工芝は、数々のスポーツに幅広く使われた。

1970 年代: どのような製品にも限界があり、市場に新たに登場してきた一連の製品は、芝面が滑りやすいという欠点を持っていた。これらの製品は主に、オリジナルのAstroturf(アストロターフ)社製品よりもパイル密度が低く、ポリプロピレン製のサンドフィル・ターフで作られていた。

1980 年代: 製品タイプによって、ナイロン製のカーペット芝がフィールドホッケーやアメリカンフットボールに使用され、サンドフィル・ターフがレクリエーションスポーツや多目的競技場に使用されるという二極化の傾向が見られた。サンドフィルシステムは、ホッケー、アメリカンフットボールのほか、サッカーの試合にも使われていた。プレーヤーとボールに対する衝撃を吸収する緩衝層が導入されたことで、サンドフィルシステムの性能が改善されたものの、コンタクトプレーを伴うスポーツにとっては、まだ芝の滑りがはや過ぎ、磨耗も非常に激しかった。

1990 年代: 第三世代の人工芝といわれた製品が台頭してくる。これにはゴムや砂の粒子が埋め込まれた、長さのある合成ファイバーが使われている。これまでよりも緩い構造が、芝の上部において衝撃を緩和した。

22.3 基準の概要

この仕様書は、ラグビーの試合に使用する最新世代の人工芝の品質標準を定めることを目的としている。本書は、開発基準とみなし、新しい芝面でのプレーやトレーニングを行うことで得られた知識や経験により、新たな情報を仕様書の変更、改良に利用して、ラグビーにおけるさらなるニーズに対応していくものである。

この仕様書は、人工芝に対するテストプログラムを実施し、ラグビーにおける要件を網羅することで、メーカー各社がそれら要件を満たす製品を開発できるようにすることを意図している。

プレーヤー、コーチ、クラブ関係者が、最新世代の人工芝から得るものは大きい。定められている要件は、天然芝の性能特性を基本としている。すなわち、天然芝から人工芝への移行を、可能な限り円滑に行うことを目的としている。ラグビーの試合は芝面とプレーヤーの身体が接触することが必要不可欠なプレー要素となるため、天然芝であっても人工芝であっても、プレーヤーが安心してプレーをできるようにする必要がある。摩擦によるやけどのリスクは最小限にとどめなければならない。また、人工芝においては、ラグビーのプレーヤーが通常使用しているスパイクの利用が可能であるものとする。

22.4 テストの規程

人工芝面とは、人工芝を敷設する下地を含む全体的な舗装構成として定義される。このため、人工芝面のテストは、テスト機関の実験室環境(製品テスト)だけでなく、完全に据付をした状態も含んだ2種類の環境で実施することとなる。製品は、一連のテストを実施して、その製品が施工に適しているかを確認していく。据付が行われたものについては、性能要件だけでなく、構造や仕上がりも確認していく。製品テスト(ラボテスト)と現地テスト(フィールドテスト)の両方に合格した製品だけが、本仕様書の要件を満たすものとみなされる。すなわち、各協会は、これらのテストに合格した完成品のみを使用可能として公認することとなる。

ステップ1 人工芝の据付や使用を希望する団体は、使用に関するIRBの規定を遵守しなければならない(規定第22条注釈を参照)。

ステップ2 メーカーは、公認テスト機関へ製品サンプルを提出する。

ステップ3 製品のテストを実施し、合格した製品はステップ4 へと進む。

ステップ4 競技場に、製品テスト(ラボテスト)で承認された製品を据付ける。

ステップ5 施工された競技場で現地テスト(フィールドテスト)を行う。

ステップ6 すべての要件を満たすと判断された製品は、各ラグビー協会による公認品として認められる。

製品テスト(ラボテスト)

テスト機関におけるテストでは、人工芝製品の品質をテストする。人工芝各製品のテストに際して、メーカー各社は、公認テスト機関の1つへテスト体1 枚を提出しなければならない。サイズは一般的に2.0m x 2.0m とする。

現地テスト(フィールドテスト)

人工芝の性能は、基盤の整地状態や、既存の路盤土の組成によっても異なる。このため、施工後の芝についてはテスト機関だけではなく、現地テスト(フィールドテスト)も実施することとする。現地調査は、実務上可能な限り、施工されてから3ヶ月以内に完了されなければならないことに注意すること。

耐候テストには数週間程度を要し、現地テスト(フィールドテスト)は施工された人工芝が安定してからでなければ実施することができないことを考慮し、最終的な芝面の承認には、最長で半年を要する場合がある。

22.5 テストの手順

フットボールの試合に適した人工芝の全体的な性能は、3つの基本的な区分によって定義される。これらは大きく分けて以下のとおりである:

1. ボールの芝面に対する反応 (ボールと芝面の相互作用)
2. ラグビー・プレーヤーの芝面に対する反応 (プレーヤーと芝面の相互作用)
3. 芝面の磨耗や断裂及び、環境に対する抵抗 (耐久性)

一連のテスト内容は以下のとおりである:

製品テスト(ラボテスト)
1. 製品の特定テスト
2. 耐久性
3. 耐候性
4. ボールと芝面の相互作用
5. プレーヤーと芝面の相互作用

現地テスト(フィールドテスト)
1. 競技場面の仕上がり確認(傾斜、平坦性、土台の透水性)
2. ボールと芝面の相互作用
3. プレーヤーと芝面の相互作用

現地テスト(フィールドテスト)は、実務上可能な限り、人工芝のテスト体が据付されてから3ヶ月以内に実施すること。

22.6 製品テスト(ラボテスト)

22.7 製品の特定テスト

特定テストは、施工された製品システムとテスト機関でテストを受けた製品が一致していることを確認するのが目的である。

単位面積あたりの質量とパイルの本数

パイルの引き抜き強度: 人工芝の基布に付けられたパイルの固定力を測定する。

パイル重量: パイルの本数が正しいということだけではなく、正しい繊度のパイルが使用されているかどうかを測定する。

パイル材質の特定: パイルはガラス転移温度と呼ばれる融点によって、その種類を特定することができる(ポリマーの種類)。

充填物: パイルの間に充填する各種充填物について明確にする(粒径/粒子の形状/容積密度)。

芝面の下部構造に緩衝層を使用する構造の場合(オプション):

圧縮係数: 圧縮係数とは緩衝層を圧縮するために必要な単位圧縮当たりの力の測定値である (緩衝層とは1つの衝撃吸収層であり、芝に対するプレーヤーの快適性とボールの反応に影響する)。

特性
表面と構成
テスト方法
単位面積あたりの質量 人工芝 ISO 18543
単位面積あたりのパイルの本数 人工芝 ISO 1763
パイル重量 人工芝 ISO 2549
パイルの引き抜き強度 人工芝 ISO 4919
単位面積あたりの質量 緩衝層(もしあれば) EN 430
圧縮係数 緩衝層(もしあれば) ISO 604
粒子の寸法 砂またはゴム EN933-1 及び933-2
粒子の形状 砂またはゴム EN933-1 及び933-2
容積密度 砂またはゴム EN (番号未決)
繊維の種類 芝用合成繊維 DSC

耐久性

耐摩耗性
芝面に人工的な摩擦をかけ(5年分の摩耗に匹敵)、次の要素についてテストする: 衝撃吸収性、鉛直ひずみ、トランクション(スパイクの引っかかり)。


接合部の強度
縫い合わせ部、あるいは、接着剤による接合部分が破壊される最大力を測定する。


耐候性
紫外線/水/熱

退色性、耐摩耗性、接合部の強度について測定する。充填物として使われているゴムの粒材も、人工芝と同様に紫外線/水/熱に露出させる。UVA よりもUVB 管の使用が推奨される。これらの環境に露出したサンプルをボールミル粉砕機にかけ、その粒度分布を調べる。


製品安定性

ラグビーの試合中に行われる通常のプレーは、人工芝面に高度の圧力をかける。使用される製品は、そのような高い張力に耐えるものでなければならない。このため、人工芝の基布は試合中に生じる力に耐える製品であることが最低限必要となる。

人工芝の長さ

ラグビーの試合の性質上、プレーヤーのスパイクのスタッドが人工芝の重点物を貫通して基布に到達し、基布を構成する繊維に対して損害を与えることがない程度のパイル厚が最低限必要になる。このため、少なくとも厚み50mm の充填材を支持するパイル厚(連結された状態)が必要になると考えるのが妥当である。すなわち、パイルの理論上の厚みは少なくとも65±2mm となる。

耐久性

特性
テスト方法
要件
耐摩耗性 N 13672 上記の特性について定められた要件を維持していること:
– 衝撃吸収性
– 鉛直ひずみ
– パイル引き抜き強度
– 摩損性
接合部の強度 EN 12228 >25N/mm
製品安定性 ISO 13934-1 >25N/mm
特性
テスト方法
要件
紫外線/水/熱 EN 13864 – 退色性
– 耐摩耗性
– 接合部の強度

プレーヤーと芝面の相互作用

人工芝の表面に対する感触は「堅い」ものと「柔らかい」ものがある。表面が堅いと、関節の骨の間にある軟骨に圧力がかかり、関節の負傷(特に足首、ひざ、臀部、脊柱)を引き起こしやすくなる。それだけでなく、堅い表面に倒れこむと、筋肉などの軟部組織の挫傷が起こり、極端な場合は骨折につながることもある。一方、柔らかい表面では、競技場を走るプレーヤーが疲れやすくなる。ある地面の上を選手が走る際に、地面がその衝撃を吸収する特性を衝撃吸収性と呼ぶ。人間の身体は、地面に接触するとき、ばねのような動きをする。ばねに圧力がかかると、一定のエネルギーが吸収される。ばねに対する圧力が解放されると、エネルギーも一緒に放たれる。同様に、人間が地面を歩く時、足をつくたびにある程度の衝撃を吸収するが、そのばねがひとたび縮みきってしまうと、それ以上の衝撃力は身体に対する衝撃に感じられる。地面を歩く時、人間の身体は、すべての衝撃と言わないまでも、ほとんどの衝撃を吸収することができるが、地面の上でジャンプをすると、身体のばねが完全に縮まり、歩いている時よりも大きな衝撃が身体にかかるのである。大きなジャンプをすれば、衝撃はさらに増え、身体も損傷を受けることがある。

衝撃吸収性を測定するために使用される器具は、人体のばねと衝撃力という2つの要素を一体化したものである。テストの対象となる人工芝面に金床をのせ、理想的なアスリートと同じ弾性係数を持つばねを金床の上において、錘をばねの上に落とす(「理想的なアスリート」には一定の条件を想定するが、平均的な男性/女性と考える。衝撃力と弾性係数は、ロックとスタンドオフが走った状態では異なる。理想的なアスリートとは、平均体重を持つ平均的なアスリートとする)。金床が受ける力は、ばねと人工芝面の衝撃吸収性を合わせた作用ということである。テストではまず、テスト器具をコンクリート床の上におき、その数値を測定する。その次に、その器具をテスト対象の人工芝面の上に置き、数値を測定する。これら2つの数値を比較し、人工芝面の上に載せられた金床が受ける力の減少度を記録する。つまり、これらの数値は人工芝面で受ける力をコンクリート面で受ける力または加重低減係数と比較した時の割合としてパーセンテージで表される。ここで測定する特性は、衝撃吸収性と称し、衝撃吸収性の測定には、ベルリン・アスリート(Berlin Athlete)もしくはスポーツ・フロアテスター(Sport Floor Tester)(写真参照)といった様々な種類の器具が使用されている。これらの器具を用いて測定した衝撃吸収性は荷重低減係数と呼び、パーセンテージで示される。係数が高いほど、人工芝面の衝撃吸収性が高くなり、「柔らかい」とみなされる。

芝面の安全性を評価する2 番目の方法は、HIC 値を調べることである。コンタクトプレーを伴うスポーツでは、重大な負傷のほとんどが頭部への衝撃にまつわるものである。長年にわたって、頭部への衝撃を地面が解消する力についての評価が行われてきたが、大半が、頭部への衝撃のリスクが起こりやすい自動車や子どものための安全な地面が研究対象のものであった。ラグビーの試合では(芝面を走る際の身体への衝撃は調整が効くのに対し)、地面に当たった時の衝撃をコントロールできないケースが非常に多い。このため人工芝面は、プレーヤーへの衝撃を吸収することで潜在的な負傷の可能性を減らすような構造とする必要があるのである。

変形/表面の安定性

プレーヤーが地面の上を走るとき、その表面の安定度は、プレーヤーのストライドのパターン(よく歩き方に参照される)に影響を与える。大きく変形する地面は、不安定な感触を与える。その結果、プレーヤーは走行時のストライドが短くなり、それに伴ってスピードも遅くなる。一方、変形しにくい表面は硬く、柔軟性がないことから走りにくい。表面の安定性は、地面のたわみ、または、変形の度合いによって測定する。これはベルリン・アスリート(Berlin Athlete)のように、金床の上に錘を落とす方法で行われるが、錘とスプリングが異なる。ここでは、力を測定するのではなく、表面がどのように変形するかをミリメートルの単位で測定する。スタットガート・アスリート(Stuttgart Athlete)か、スポーツ・フロアテスター(Sport Floor Tester)のいずれかの器具を使用して、鉛直ひずみという特性を測定し、変形度をミリ単位で表示する。人工芝面が大きく変形すると、柔らかくしなやかな表面であることを示し、変形が皆無あるいはほとんど見られない場合には、硬く締まった表面であることを示す。天然芝で言うところの表面が水を含む泥状の地面は変形度が大きい。一方、硬化して乾燥した地面は、ほとんど変形しない、あるいは、全くない。


滑り抵抗

ラグビー・プレーヤーが芝の上を走る場合、必要に応じて加速あるいは減速して走ることができるよう、十分に足で自分を支える力が必要となる。ラグビー・プレーヤーには、立った状態から加速するという動作のほか、すばやく止まるという動作も必要である。このような特性の動作を行うには、スパイクの底と地面との相互作用が必要となる。スパイクがしっかりと地面を捉えることで、その力がプレーヤーへ推進力として伝えられ、立った状態から走ってもすぐに加速することができるのである。これと同様に、走っている状態からすばやく止まるためには地面を確実に捉えることができなければならない。捉える力が十分でないと、プレーヤーはスリップし、完全にバランスを崩したり転倒したりする。その結果プレーヤー自身のプライドが傷つくだけでなく、筋・靭帯や軟部組織さらには骨に至るまで身体的な損傷を被る危険性をもはらんでいる。これと反対に、地面を捉える力が大きすぎても、危険な状態を生む。プレーヤーが止まろうとする時、身体が前に進もうとする勢いを止めようとする力が靭帯や関節にかかり、このような力が急激にかかると、靭帯や関節に損傷を引き起こすひずみとなる危険性がある。この特性を評価するために使用する方法が滑り抵抗の測定であり、人工芝面でのこのような力を測定する際には、改造型ルロー・ペンデュラムテスター(Modified Le Roux Pendulum Tester)を使用する。プレーヤーが滑って転倒することを防ぐことを目的に、滑り抵抗の最小値を設定、また、地面に足が捉えられることで関節や靭帯の負傷を防ぐためとして、滑り抵抗の最大値を設定している。


トラクション(スパイクの引っかかり)

スパイクと人工芝面の相互作用のもう1つの要素に、スピードを出して走っている状態で思い通りに方向を変えられることがある。ラグビーは、常に一定の方向に向かって行うスポーツではなく、プレーヤーは何度も動く方向を変えていく。このため、プレーヤーは試合の展開に応じて、動作の方向を定期的に変えていく必要があるのである。プレーヤーが何度でも方向を変えられるよう、地面とスパイクの底の間に十分な牽引力がなければならない。滑り抵抗と同様、牽引力にも上下限界値を設定する必要があり、牽引力が足りないとプレーヤーは足もとが不安定になり、強すぎると筋肉、靭帯、関節に過剰な応力がかかることで、損傷を受ける可能性がある。人工芝面に関してこの特性を測定するには、牽引力測定器を使用する。この器具にはトルクレンチが使われており、スタッド付ソールが動き始める時点で必要とされる回転力を求めることができる。回転力の単位はニュートンメートル法(略: Nm)とする。


摩損性

他のどのスポーツの平均回数と比べても、ラグビー・プレーヤーは肌を保護していない状態で競技場の地面に接触する回数が多い。両手、両膝、両肘、顔など、平均的なラグビー・プレーヤーの肌はつねに地面に接触する可能性があるため、地面とプレーヤーの肌との相互作用についても評価を行う必要がある。人工芝面のこの特性については、同じ器具を用いて2 種類の異なるテストで検証する。人工芝面の摩損性はプレーヤーの擦り傷や切り傷の度合いで判断することができる。また、人工芝面に擦り付けられた肌の表面から生じる熱も検証される。この熱は、摩擦熱によるやけどを引き起こす可能性を持つ。

エネルギー反発力

地面には衝撃吸収性や鉛直ひずみという特性がありながらも、その上を走るプレーヤーにとっては疲労を伴うものでもある。この特性は、地面の上を走るプレーヤーに跳ね返るエネルギー量を反映している。羽毛入りのマットとスプリング入りのマットの違いを想像してみるとわかりやすい。ベッドの上に飛び込むと、どちらのマットもソフトな感触で、衝撃を吸収しているのがわかるだろう。一方でこれらのマットの違いは、羽毛入りのマットは衝撃がかかると変形してその上に乗った体のエネルギーを吸収するのに対し、スプリング入りのマットではエネルギーが戻ってきて体が空中に跳ね返される点である (子供の頃のことを思い出してほしい)。これらマットの表面と同じことが地面にも当てはまる。天然芝でさえ、水をたくさん含んだ地面と理想的な条件の地面を比べると、あるいは芝の長さが25mm と100mm のものを比べると違いがある。水を含んで飽和した土は理想的な状態の土よりも高いエネルギーを吸収し、プレーヤーに対する反発力が少ないため、プレーヤーが疲れやすい。このような特性を、エネルギー反発力と呼ぶ。エネルギー反発力は、身体が衝撃を受ける前後のエネルギー量で表わされる。このテスト手順は現在開発中であり、重要な地面の特性の限界値を簡単に特定することができるようになる。このため現在は、この特性に関する性能基準をさらに改善するため、その情報がより多く得られるまでの過渡期として、まず比較的広範な許容範囲を設けている。テスト方法は、ベルリン・アスリート(Berlin Athlete)を利用した方法になる。

特性
テスト方法
要件
衝撃吸収性 EN 60-75%
H/C EN 1177 <1.0m
鉛直ひずみ EN -低衝撃度(Stuttgart Athlete)4
-10mm-高衝撃度(Sport Floor Tester)7-16mm
牽引性 IRBメソッド 30-50N.M
滑り抵抗 NSF版Le Roux 法 0.6 – 1.0μ
摩損性 フィルム上に擦り傷がないこと
摩擦熱 最大5℃
エネルギー反発力 30-50%

ボールと芝面の相互作用

予想よりも高くボールが弾むと、プレーヤーはそのボールをコントロールすることができないことは明らかで、ボールが頭の上を超えて弾んだり、弾み方が低くて上げた足の下を通りぬけていったりする。このため、地面に対して一定の高さからボールを落とした時に、そのボールが弾む高さを測定する必要がある。この方法は比較的シンプルな方法のようだが、ボールの構造に関する多くの要因から、1つ1つのボールによって違いがあるため、2つのボールをある特定の面に対して落としても、運がよくない限り、同じ高さに弾むことはない。この問題を解決するために、各ボールの圧力を調整し、競技場の同じ場所に、同じ高さからボールを弾ませてみるようにする。ボールの鉛直反発力は、特定の高さからボールを落として、そのボールが弾んだ高さも測ることで判定される。ラグビーボールは常に垂直に弾むことは不可能であるため、この測定テストでは丸いボールを使用する。

ボールの跳ね返りパターン

ボールの鉛直反発力は、ボールの跳ね返りによって、地面の弾力を測定する。ボールの転がり(地面の速度の意味)では、芝面を転がるボールの速度を測る。その数値はボールと地面の摩擦にも関係している。一方、角度を付けて空気中に打ち上げられ地面に打ち付けられたボールが、地面に斜めに当たり跳ね返る特性をボールの跳ね返りパターンと呼ぶ。と言う。この特性は、ボールと地面の相互作用の1 つであり、ボールが地面に接触した時の摩擦、水平速度、垂直反発力が関与する。言い換えれば、一定の角度とスピードで飛んできたボール、特に長い距離を飛んだボールは、一定の角度とスピードで弾む。もしボールが予想に反したスピードや軌道で弾んでくると、コントロールするのが難しくなる。このため、可能な限り、地面に斜めに当たったボールの影響を測定することが必要になってくるのである。ラグビーボールでは一定の跳ね返り角度を得ることが難しいので、このテストのために丸いボールを使用する。

特性
テスト方法
要件
鉛直反発力 EN 12235 30-50% (絶対値)
跳ね返り挙動 – 衝突角度25°、速度が時速50km の状態で50-70%

22.8 競技場面の仕上がり確認

ラグビー・フットボールの試合においては、一定の構造要件を課すことが必要となる。

1.0 競技場の傾斜は、ボールが望ましくない影響をうけるほど過剰なものであってはならない。そのような状態でトップレベルの試合を行うことは難しい。観客の目から見ても、傾斜があり過ぎると景観が良くない印象を与える。

2.0 芝面は一定の平坦度を保ち、プレーヤーがその上を走っても、そのストライドに影響がないものとする。平坦度については2つの要件がある。1つは競技場の全体的な平坦度を確保すること、もう1つは合成芝のつなぎ目に見られるような、芝面の小さな段差を防止することである。

3.0 芝全体を通し、排水口への排水が自在に可能であるよう、芝の基礎部分には透水性をもたせる必要がある。

要件

特性
テスト方法
要件
傾斜 EN 22768-1 <1.0%
平坦性(1) EN 22768 3m 未満で<10mm
平坦性(2) EN 22768 300mm 未満で< 2mm
基盤の透水性 EN 12616 >180m/時

22.9 公認テスト機関

テスト機関は、実績があり、正確にテストを復元することができなければならない。このため、適正な実績とISO 規格に準じていることを示すことができるテスト機関のみを採用することとする。選ばれたテスト機関は、ISO 規格によるISO/IEC17025 1999 とISO4502 を必ず満たしていること。使用する機器類はすべて、これらの手順によって必ず登録されていなければならない。機器の一部だけが要件を満たし、その他の部分が要件を満たしていない場合には不十分とみなす。さらに、製品テスト(ラボテスト)と現地テスト(フィールドテスト)には同じ器具を使用して一貫性を保たなければならず、多様な器具を使用することは認められない。テスト機関は、以上のことを証明するために適切な認定書を提出し、認定は更新されること。テスト機関は、テストを実施するスタッフに十分な経験があることも証明しなければならない。経験のない臨時スタッフがテストを行うことがあってはならない。

22.10 品質保証

テスト機関は、据付けた製品が製品テスト(ラボテスト)のために提出された製品と同じであることを確認する責務を負うものとする。この作業を次のような方法で実施する。

1.0 すべての製品について、証明書を提出しなければならない。証明書は、ISO9002 あるいは同種の規格に基づいた手順に従って製品テスト用に提出された製品と納品される製品が同じものであり、かつ、それに準じているということを示すものであること。証明書は、製品が据付けられる場所へ出荷される前にテスト機関に送付され、その機関が受領していなければならない。

2.0 テスト機関は、製品について懸念を感じる正当な理由がある場合、製品のサンプルを要請し、同製品の内容を確認することができることとする。

3.0 製品の特長に小規模な変更が行われた場合には、それが規格による要件を満たすものであることを証明しなければならない。大規模な変更が行われた場合には、製品の全体的な再評価作業が必要となる。

4.0 発注者は、別文書及び製造者の推奨に規定されているとおり、必要なメンテナンス要件を満たす作業を実施することができなければならない。この場合には、最低限必要な機器を購入し、機器の取り扱いができる適切な認定作業者が実施する旨を提示しなければならない。

5.0 競技場は、ラグビーの所定の使用方法に引き続き適したものであることを確証するため、施設の寿命が続く限り、定期的なテスト実施することとする。これは製品が前述に定義した要件を常に満たしていることを確認することを目的としており、経年変化した製品の再テストも含むこととする。製品が十分に適切な特性を有していると判断されるまで、一定の検証期間が必要とされることもある。そのため現地テスト(フィールドテスト)は、競技場に据付けられた後、天候が許す状況のもと3ヶ月以内に行うこととする。

22.11 今後の展開

人工芝の新しい技術や優れた品質の新たな構造の製品が開発されれば、販売促進活動をしなくても、経済的あるいは環境的に天然芝を使用することができない条件(スタジアム内部特有の日照条件、風通しなどを含む)において、少なくとも人工芝の利用を促していくことができる。一方、完璧に美しく刈り込まれた天然芝の代用品として、人工芝を検討する選択肢もあるだろう。しかしながら、競技場に人工芝を使用する際には、正当な理由があるべきである。

将来のことを予測するのは不可能だが、ラグビーという競技に良い影響を与えてくれるような製品開発が行われることは間違いない。

IRB は本書を開発基準とするが、内容については今後通知なく、任意に変更される場合がある。

22.12 連絡先

IRB Member Services Department,
International Rugby Board
Huguenot House,
35-38 St. Stephen’s Green
Dublin 2
Ireland
Tel. 353 1 240 9200
Fax. 353 1 240 9201

この基準に準拠していても、それが正当な義務の免除を意味するものとはならない。

規定第22条‐注釈 人工芝の使用に関する要件

以下に規定する技術仕様に準じた競技場用の人工芝の据付を希望するグループあるいは団体は、次の条件を必ず遵守しなければならない:

1. 人工芝競技場の据付またはその利用(場合によって)については、事前にその国の協会の書面による許可を受けなければならない。

2. ラグビーにおける競技場用人工芝の使用を申請する団体は、競技規則1.1の規定が適用されているようにしなければならない。

3. 第1回目の許可の際には、各ラグビー協会が競技場の安全性やその関連事項について適合性/性能を検証してから2 年間を使用期間として許可することとする。

4. 各ラグビー協会は、競技場の使用の許可取り消し、及び/または、競技場の使用許可の追加条件、及び/あるいは、修正条件の適用に関して絶対的な裁量を持つ。

5. 許可を付与されることは、競技場あるいはこれらに関連した競技場について、IRB あるいは各協会の支持が得られたことを意味、及び/または、暗に示すものとはならない。

6. 国際試合で使用する競技場については、試合前における両チームの合意の上で適用することができるものとする。通常、当該国際試合の開催日から60 日以上前までにそのような合意がされていなければならない。

7. 当該競技場の製造者は、いかなる方法によってもIRB との提携関係を求めたり、それを促したりすることがあってはならない。

8. 各ラグビー協会は、当該競技場での競技に参加するすべてのプレーヤーが、その競技場で行われるスポーツ競技に参加することに伴うリスクを理解及び認識しているようにしなければならない。

9. 各ラグビー協会は、当該競技場上で競技に参加したプレーヤーの負傷状況を監視し、かつ、これを記録した上、このガイドラインの付属文書1の書式により、同一の内容を四半期毎にIRBへ報告しなければならない。各ラグビー協会はその責務として、プレーヤー/コーチ/メディカル担当者が記入したこれら書類をIRBへ返送できるよう、同意を得る。これらの個人情報をIRBとその関連委員会に提示することについては、各プレーヤーがそれに同意していることを確認するためとして、必要なすべての手順を講じることとする。このため、添付書類(付属文書1)は必要に応じて変更される場合がある。

10. 競技場メーカー/据付業者、及び、該当する場合における競技場管理団体は、あらゆる請求事項、申し立て、法的措置、損害賠償、経費(際限なく)、法的費用、訴訟や審理に関連する専門家や証人の経費、損失、競技場の状態、及び/または、仕様書に準拠しなかったこと、及び/または、メーカー及び/または競技場の据付業者、及び/または競技場管理団体(場合によっては)によるその他の行為または不作為が原因であるプレーヤーの負傷に関連して発生した利子または経費について、また、それらに対し、IRBとその関連会社、各協会とその役員、職員、代理人に対し補償、免責することとする。

11. 競技場メーカー、据付業者、及び、該当する場合による競技場の管理団体は、上記10のもとに生じるあらゆる請求に対処するため、信頼のおける保険会社との合法的な損害賠償保険を適切に契約し、かつ、それを維持することとする。契約する補償金額は500万英国ポンドとする。

12. IRBは、当該競技場の性質に関して適切だと思われる限り、本仕様書の条件を追加することができるものとする。